◎2007/2/6(火)
遅れてるな、って思ってた。ずっと高温期が続いているし、もしかして、って思ってた。最後の月のものが終わったのが、1月2日。私は35日周期だから、次の予定は1月31日頃のはず。1週間、遅い。でも、それぐらい遅れることもたまにある。ぬか喜びしたくなくて。だって、妊娠じゃなかった時の落ち込みが倍になるから。今まで、もしかしてって淡い期待をして、すると残酷なほど途端に生理がきて、何度泣いたことだろう。
でも今回は、お腹のちくちくする痛みが生理前のそれとは違う。意を決して、妊娠検査薬を取り出す。即効、ブルーのラインが。
陽性反応!!!
「やったぁ~~~、、、やっと、、、」ひとりつぶやいた。嬉しくて、信じられなくて、しばらくトイレで座ったまま動けなかった。
その時、突き刺すような痛みが右下腹部に走る。「っつ、、、痛~~~」思わず声に出して唸ってしまうほどの痛み。喜びの反面、不安も募る。待ちに待った結果が出ているのに。両手を挙げて、喜びきれない自分がいた。
土曜日に、病院へ行こう。そこではっきり分かってから、笑顔で彼に報告しよう!
◎2007/2/8(木)
6日に陽性反応が出てから、密かに葉酸サプリなんかも摂ってます。今週末は三連休。11日には、お義父さんの定年退職のお祝いで、家族揃ってお食事会の予定。その時に、妊娠したことをお知らせできるかな。初孫をまだかまだかと待ち望んでいる義両親にこれ以上ない、最高のプレゼントになるはず!
そんな楽しい思いをめぐらせつつ。
朝起きた時、やけに暑いと思った。相変わらず基礎体温は高温をキープ。朝いちのトイレで、拭いたペーパーに赤みの混じったおりものがついた。先月末からずっと、おりものが多くてライナーを付けている。下腹部がちくちくする。通勤電車で立っているのがかなり辛かった。
10:00。
会社に着いてトイレに行くと、ライナーに出血跡。暗赤色。不安が押し寄せる。今週月、火、水、とやけに食欲旺盛でランチももりもりだったのに、今日はなんだか身体がだるくて、何も食べる気がしない。仕事の集中力もない。なんとなく不安定なお腹をそっと擦ってあげる。
16:00。
デスクに座っている時、右下腹部に激痛。呼吸が乱れるほどの激痛で、右手でお腹を押さえ、思わず左手で顔を覆う。こんな時、幸か不幸か、外資系のパーテーションに区切られたオフィス環境で私の様子に気付く人はいない。気心の知れた斜め後ろの同僚は、席外しだ。
手がどんどん冷たくなるのが分かる。目の前がさーーーっ、、、と白くなる。あ、、、やばい。尋常じゃない自分に、焦る。デスクに上半身倒れ掛かる感じで、動けない。意識が遠のいていく感覚に、必死に抗う。え、、、オフィスで気絶しちゃったらどうなるの、、、激痛に耐えながら考えたりした。その間、15分か、20分。
ずくずくした痛みが鈍く残っているものの、意識は戻る。戻った意識とともに、私の身体は絶対何かおかしいと、確信する。土曜日まで待たず、明日、病院に行かなきゃ。
◎2007/2/9(金)
先日から調べておいた、近所の産婦人科医院へ出かける。
8:30からの午前診療、8:45頃に着いたら待合室には先客が5人はいたような。待っている間も、妊婦さんが続々やってくる。大きなお腹。ステキだなぁ、、、午後出社するつもりでいたけれど、妊婦さんに囲まれて診察の順番を待っている間に仕事はなんだかどうでもよくなってきた。体調不良、ということで、お休みすることを早々に連絡する。
待つこと1時間ちょっと。ようやく名前が呼ばれて、ドキドキ。そこでも尿検査をして、そして内診。
子宮には、何もない。何も映らない。
先生は、まだ何とも言えない状態だと。
もう第7週に入っているから、普通だったら子宮の中に胎のうや退芽が見えるはず。でも、私の周期は遅いから受精後間がなく、まだ小さすぎて見えないのかもしれない。尿検査からは、妊娠反応がしっかり確認できているし、、、子宮外妊娠の可能性も、ないことはない。でも先生の口ぶりは、あと1週間もすれば見えてくるんじゃないか、という楽観的なものだった。
ネットや書籍で調べたところ、子宮外妊娠の全妊娠に対して占める割合は、1%前後。初産に比べて経産に多く(80%)、特に1回経産婦が最も多いことも特徴。まさか私が、、、だよね。不正出血に関しても、小さなポリープがあったようでそこからの出血じゃないかとのこと。
とりあえず、安静に。出血が続くようなら、1週間待たずにまた来るように。基本的には1週間後にまた来てください、と言われた。宙ぶらりんな気持ちを抱えたまま、医院を後にする。あと1週間も、もやもやした気持ちのまま過ごすのか、、、早く「赤ちゃんできたーーー!!!」って、宣言したい。
赤ちゃんを授かったとちゃんと分かった日に、その日の空を撮ろうと思って持ってきていたデジカメ、出番なし。ちくちくするお腹をいたわりながら、大好きなケーキを買って帰った。
◎2007/2/10(土)〜2/12(月)
その後怒涛のように押し寄せる苦しみと悲しみのことなんて、微塵も予感させない、清清しく晴れた三連休。休日も仕事が入ることの多い彼が、珍しくきちんと三連休。そんな時に限って、私の調子がいまいちなんだもんね。基礎体温は高くて、身体がだるい。少量の出血が続く。トイレに行くたびに、小さな不安と戦う。でも、なぜか食欲だけは旺盛。(なんなの~)
何かの拍子に、キーン!!と刺すような激烈な痛みが下腹部を貫く。お腹をかばって、前屈みになって小幅でしか歩けない。
産婦人科で診てもらって、妊娠かどうかまだはっきり判らないけれど。一応安静に、ってことらしい、と彼に伝える。
彼は私を、一生懸命気遣ってくれる。「しんどかったら寝ときな。」そう言って髪をなで、頬やこめかみにそっとキスしてくれる。「何かして欲しいことある?」本当に、優しくてあまい人。そばにいてくれるだけで、いいよ。
土曜日は習い事があったけれど、大事をとってお休み。日曜日のお食事会の予定は、彼のお兄さんが曜日の勘違いをしていたためキャンセルに。不幸中の幸い。
元気な気もするのだけれど、動くとやっぱり辛い。連休中、ソファでMTVをぼんやり眺めたり、お昼寝もよくした。彼は、リビングいっぱいに広げた組み立て式飾り棚の、ニス塗りに精を出す。夜はお寿司をとって、CSでたまたま放映してた『私の頭の中の消しゴム』を見ながら食べた。若年性アルツハイマーで、愛する人の記憶を失っていく、妻。その妻を支え続ける、夫。切なく悲しい物語。「ねえ、もし私もこんな病気になったら、どうする?」何のひねりもない質問を彼に投げかける。こういう会話、この映画を見たすべての夫婦/恋人同士がしたはずだよ!って、我ながら可笑しかった。
日曜日は。すっぴんOKなほどすぐ近所の、台湾料理屋にランチを食べに行った。点心や、スペアリブの黒酢煮。元気が出て、何となく赤ちゃんによさそうなものを食べた。
月曜日、出血もなく、とても調子がよくなってきた。まだはっきり判っていないとはいえ、私はずっと、密かに、語りかけている。きっと、私の中にいる、小さないのちに。
お茶の時間に、シナモンスティックとカルダモンを入れてチャイを煮出す。おつまみにサラミとクリームチーズ on リッツ。安静に、楽しくおいしく過ごした三連休。